管理者インタビュー

山口 武典 先生

NCDのステークホルダーでまとまって議論し、法律改訂などにインパクトを与えていくことが求められています。また、NCDは生活習慣の改善によって予防が可能であることを市民に啓発していくことも必要です。

脳卒中対策推進に向けた関連団体との協働

日本脳卒中協会が最も力を入れている脳卒中対策基本対策法の法制化に関しては、神経学会、脳神経外科学会、救急医学会、リハビリテーション医学会、理学療法士協会、作業療法士協会、言語聴覚士協会、救急救命士協会などと「脳卒中対策立法化推進協議会」を結成して、立法や行政に働きかけています。
また、脳卒中に関する学術集会である脳卒中学会の時に、たとえば日本血液学会、日本高血圧学会、日本糖尿病学会、日本循環器学会などとの合同シンポジウムという形で、学会間でお互いに交流している。特に、神経学会、脳神経外科学会、リハビリテーション医学会、救急医学会などとの交流が多いです。

今後は疾病横断型の連携があるとよいと思いますが、疾病ごとに共通点、また特異な点があるので、その見極めが重要です。少なくとも脳卒中に関しては脳卒中協会の歴史は長く1997年に設立され、2005年に社団法人化されています。現在、46都道府県と政令都市に支部を持っており、非常によくまとまっていると思います。
2007年に「脳卒中戦略会議」を協会内で開き、その際脳卒中の克服にはいろいろな面からのアプローチが必要であり、目的達成には法制化が必要であるという結論に達しました。
例えば、一般市民への啓発活動を行うにしても、我々がボランティアとして行っていたのでは継続性がないことや、医療者側(医師、その他の医療者、病院、救急隊など)のレベルアップを図るにはある程度の強制力が必要なことなどがその理由です。
その目的を達成する為に「脳卒中対策検討特別委員会」をつくりました。委員会には脳卒中学会はもちろん、看護協会、PT・OT・ST協会の代表、患者代表として、元NHKアナウンサーの山川静夫さんにも入って頂き、基本法の要綱を作りました。
基本法を作ることによって、プロパガンダ、啓発活動がスムーズに行われるということと、厚生労働省、文部科学省、総務省など省庁間の壁が低くなるであろうと考えています。この基本法について、危険因子がほぼ同じだから心臓病まで含めた「循環器病対策基本法」をつくるという考えも提唱されましたが、発症後の対応と後遺症への対応が大きく異なるので、まとめるのは困難であると考える者が多いです。

NCD対策を国内で推進するに当たり、それぞれの疾患の関連学会がコミュニケーションをとること、特に合同ディスカッションをすることが必要でしょう。国内で疾病横断的にまとまって議論して、NCD対策にインパクトを与えていくことは必要。しかし、縦と横のつながりをバランスよく行わなければなりません。

期待されるグローバル展開

疾病横断型のNCD対策を日本で成功に導き、その学びをグローバルに展開することは大いにあり得ると思います。
ただ、いろんなステークホルダーと親密にコミュニケーションをとりながらやっていかないとうまくいきません。
NCDというのは、危険因子と呼ばれる生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症など)の治療とその元となる生活習慣(食べ過ぎ、飲み過ぎ、吸い過ぎ、働き過ぎ、怠けすぎ)の改善によって減少するので、そのことに関する市民啓発が必要です。
とくに脳卒中と虚血性心臓病は発症した時の緊急対応が適切かつ迅速に行われなければならない点は両者に共通です。

しかし、その後の後遺症ケアに関しては全く異なっていることも考えておかねばならない。地域医療、病診連携、病病連携も大きな役割を果たしていくでしょう。
とくに脳卒中はこの仕組みが必要かつ重要です。脳卒中患者にとって極めて大切な急性期、回復期リハビリテーションに関する各分野の連携は最近かなり広がってきましたが、今後、ますますの発展が期待されます。

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