管理者インタビュー

松森 昭 先生

疾病横断型で協働するために、各団体の声をまとめる活動が必要です。4疾患でまとまることにより、政府、企業、市民団体等の多様なプレーヤーが協力しやすい体制をつくることができるのではないでしょうか。

世界心臓連合、アジア太平洋心臓病学会及びアジア太平洋ハートネットワークの活動

世界心臓連合は、心臓病や脳卒中で苦しむ人を減らし、全世界の人がより長く、より良い人生を送ることを目的とし、行政、医療従事者、患者団体や個人と共に活動をしています。世界心臓連合は、アジア太平洋、ヨーロッパ、アフリカ、南北アメリカ地域の4つに分かれ、4つの地域の学会組織をまとめています。アジア太平洋心臓病学会は1956年に設立し、現在17カ国が加盟し、アジア太平洋ハートネットワークは財団として、アジア太平洋心臓病学会と協働して活動しています。
アジア太平洋ネットワークは、市民活動を中心に地域の衛生の改善、タバコ、リウマチなどの対策に取組み、特にアジアを中心とした活動を行っています。

NCDへの対策

NCDは、元来、カリブ海のカリビアン・シビル・ソサエティーで7、8年前に始まりました。それをWHOが取りあげ、世界的なキャンペーンを行っていま す。NCDは、世界中の総死亡の60%を占め、その多くは開発途上国や低中所得国でおきています。この重大な世界的課題に対し、世界心臓連合も注力して取組む機運が生まれました

日本ではがん患者の方が多いですが、世界でNCDを患っている人の半分以上は循環器疾患です。循環器疾患とがんに共通するリスクファクターは喫煙です。世界の心臓病学会や財団でも、タバコ対策に取り組んでいるところは多くありません。我々は一般の人々へ心臓病と喫煙の 関連の周知が重要であると考え、世界心臓連合の主催する世界ハートデーに合わせ、3年前からタバコ対策に本格的に取り組んでいます。また、今年の世界ハー トデーのテーマのひとつはNCDです。
我々は運動不足、タバコ、食事、アルコールの4つのうち、運動に特に注目し、ウォーキング・イベント等を企画してい ます。歩くことは、がん、呼吸器疾患、心臓病、糖尿病の予防、改善において重要です。今後はシンポジウムにも注力し、医療従事者、一般市民にもNCD対す る認識を深めてもらうため、学術的な側面からもサポートし、NCD対策を広げていきたいと考えています。

求められる疾病横断型の対策

日本では、疾病横断型で声をまとめる人が少ないが、疾病横断型の協働なしには状況が変わりません米国では米国際心臓学会などの学術組織が、多様なプレー ヤーと連携し、分野横断的な活動を推進しています。例えば、学会の働きかけにより、企業が健康食品の開発を行う場合に課税額を低くする等の政策が実現しました。タバコ税、酒税を増額し、増額分を患者の医療費に充当するなど、日本でも政策としてできる対策があるでしょう。

NCDアライアンスをテーマに掲げ、4疾患でまとまって活動を推進すると、政府、企業、市民団体等の他プレーヤーも協力しやすいのではと思います。日本人は健康志向が強いので、食品企業の健康的な食品という認定マークがあれば、皆、多少高くても買うのではないでしょうか。
各国の事情は、医療や経済などそれぞれ異なるでしょうが、慢性疾患対策に注力している日本だからこそ、アジアに発信できることがあると思います。アジア太平洋心臓病学会は関西地方を中心に活動しているが、活動を全国的に広げていきたいです。

2013年8月5日時点でのご所属、事業・業務内容
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