【開催速報】NCDアライアンス・ジャパンリニューアル記念「患者・当事者協働型のより良い医療環境の実現」 ~ 患者・当事者の参画が社会を変える~ 2019年11月13日(水)
がん・糖尿病・脳卒中含む循環器疾患・呼吸器疾患・メンタルヘルスをはじめとする慢性疾患をまとめて総称したNCD(非感染性疾患)アライアンス・ジャパンは、2019年11月13日、学士会館(東京)でNCDアライアンス・ジャパンリニューアル記念グローバルフォーラム「患者・当事者協働型のより良い医療環境の実現 ~ 患者・当事者の参画が社会を変える~」を開催しました。
NCDアライアンスは、170カ国以上の2,000を超える団体によるネットワークで、現在はNCDアライアンス・ジャパンと同じような、65の地域/国家別のアライアンスが加盟しています。日本医療政策機構が運営するNCDアライアンス・ジャパンはこのたび、包括的かつ疾病横断的なNCD対策をさらに推進するため、活動をリニューアルすることになりました。NCDアライアンス・ジャパン疾病横断的に様々な関係者を繋ぐ協働プラットフォームとして、政策提言活動、当事者に対する能力開発支援、定性的・定量的な研究を通じた専門知識の国内外への普及などの活動を展開していきます。フォーラムの主な内容は以下の通りです。
■基調講演
日本医療政策機構マネージャーでNCDアライアンス・ジャパン事務局の西本紘子が、日本のNCD政策の概要ならびにNCDアライアンス・ジャパンのビジョンと活動を紹介する講演を行いました。がん領域において当事者の声が初めて政策に反映された例として、2006年にがん対策基本法が制定されるなど、政策形成プロセスにおいて当事者の参画に一定の進展が見られる一方で、日本のたばこ、アルコール、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸に関する規制など、他国に比べて取り組みが遅れていることに対して、市民社会が一致団結し声をあげる必要性について訴求しました。NCDアライアンス・ジャパンの主なアドボカシー領域として、正しい疾患情報の普及、最適な医療提供体制の構築、就労・社会参加の推進が挙げられ、リニューアルしたNCDアライアンス・ジャパンは、こうした活動を支援するため全力を尽くすことが共有されました。
続いて、一般社団法人ピーペック代表理事の宿野部武志氏が、「患者・当事者協働型のより良い医療環境の実現に向けた想い」と題した基調講演を行いました。宿野部氏は、疾患横断で取り組むことの意義・重要性として、「それぞれの知見を持ち合うことで、質が高く、早い課題解決が可能になるものと確信している」と述べました。また、患者中心の医療ではなく、患者を含めた医療に関わるすべての立場・職種の人が、患者の治療や生活の改善を行うためにゴールを共有し、そこに向かって共に前進していく「患者協働の医療」の意義について訴えました。
最後に、ケイティ デイン氏(NCDアライアンス代表)が、「NCD政策のグローバルな潮流と患者・当事者による意味のある参画」と題した特別講演を行いました。この講演でデイン氏は、ほぼ全ての地域でNCDが死因の第1位を占めること、対応可能なNCDの5つのリスク因子――喫煙、過度の飲酒、不健康な食事、運動不足、大気汚染――に加えて、疾患負荷に比してグローバルに配分される資金・リソースの少なさも、NCDの影響を悪化させる要因であることを訴えました。一方で、NCDsが「持続可能な開発目標(SDGs)」のひとつに掲げられ、世界保健機関(WHO)が「NCDに関する世界行動計画」を策定し、患者アウトカムと医療経済性の向上の観点から有用なNCD政策的介入が提示されるなど、NCDへの国際的な注目の高まりという点では、大きな進歩が見られます。とはいえデイン氏は、半数の国がSDG3.4の目標を達成できない見込みであること、かつてのタバコ大手と同じ戦術を用いて食品大手・アルコール大手企業が妨害していることに、懸念を示しました。これらの課題に対処するため、当事者の声を反映した、国家レベル、地域レベルでの強力な政策的リーダーシップとともに、NCD政策が確実に実行されるよう、市民社会が果たすチェック機能の重要性について訴えました。
■パネルディスカッション
今回のグローバルフォーラムでは、2つのパネルディスカッションが開催されました。「私のストーリーから社会を変える~より良い医療環境の実現に向けた課題と今後の方向性~」と題した最初のパネルディスカッションでは、患者支援団体の代表らが、実体験に基づく個人的なストーリーと、NCDの疾患横断的な課題を共有しました。「マルチステークホルダーを結び社会を変える~患者・当事者協働の促進に向けた課題と今後の方向性」と題した2番目のパネルディスカッションでは、患者参画と協働体制の構築に向けた国内外の好事例を共有し、様々なステークホルダーの政策形成/発信への参加をどう進めていくのがよいか、話し合いました。
日本では近年、政策立案・実施のなかで、NCDと共に生きる当事者の声を反映させることに重点を置いた施策が生まれていますが、まだこの動きは社会全体に広がっていません。医療政策立案プロセスに患者・当事者を確実に参画させるためには、法整備が必要であることが改めて確認されました。